KISS

ガラッ!


「えみちい?」


あたしのただ事じゃない様子に、桜が怪訝な顔をして近づく。


「おい・・・」


龍が肩に乗せてきた手を振り払った。


バッグの中から携帯を引っつかみ、巧の携帯にかける。


プルルル・・・


お願い、出て。


プルルル・・・


巧。


プルルル・・・


何コール過ぎても巧は出ない。


「えみ!」


龍があたしの肩を引っつかんで、無理矢理自分の方を向かせた。


「落ち着け!」


普段、クールを自称している龍には珍しくあたしから奪うように携帯を取った。


「巧、が・・・」


どうしよう、事故に合っていたら。


どこか怪我していたら。


最悪の場合?


あたしに代わって龍はコール音を聞いている。


プルルル・・・


プルルル・・・


プルル・・・カチャッ
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