KISS
「えみ」


交通量の多い交差点。


ふと立ち止まる海くんを見つめる。


ふわるとふたりの間に風がふいた。


・・・自惚れてるだけかもしれないけど。


海くんが次に紡ぐ言葉が分かった気がした。


「一一・・・」


その言葉は、車の音で聞こえたかった。


否、聞こえなくてわからかったフリをした。




『すきです』




海くんの唇からの言葉。


全く嬉しくないって言ったらものすごく嘘。


・・・だけど、それ以上に愛しいって思えるものがあるたしは、何を答えることも出来ない。


「早く、行こう?」
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