KISS
総合病院につき、陸ちゃんの病室を訪ねる。
コンコン
「はーい」
陸ちゃんの声がして、パッと入口が開いた。
「えみ・・・」
あたしの顔を見て、全てを悟ったらしい。
「ごめんなさい」
「・・・陸ちゃん、変わってないね」
あたしは陸ちゃんの肩をそっと支えて、笑った。
陸ちゃんはちっとも変わってない。
テニスが好きなところも。
たったひとりの兄弟・海くんを大切に思う気持ちも。
「あたし、えみが羨ましい」
陸ちゃんがぽつりと言う。
「巧の気持ちも、健康な体も」
あたしの欲しかったもの、全部持ってるから。
病室の隅に置いてある陸ちゃんのラケット。
「・・・あたしも陸ちゃんが羨ましいよ」