KISS
ラケットを手に取って、陸ちゃんに渡す。
「何かを失ってもそこから立ち上がる強さがあるから」
あたしにはないもの。
何があっても揺るがない強さ、ぶれない自信。
あたしも巧を思うとき、その強さを持てればいいのにって思う。
「えみも変わってない」
突然、陸ちゃんがふわっと笑った。
「えみってね、巧を見つめるとき不安そうな顔するの」
今もそういう顔だった、とクスクス笑う。
「でも巧が傍にいるだけですごい幸せそうな顔してる」
・・・知らなかった。
はにかみ笑いをしたあたしに陸ちゃんは微笑んだ。