KISS

「なに女子高生ナンパしてんだよ親父」


呆れたような声は巧のもの。


振り向く前に腰に腕をまわされ、強い力で引っ張られた。


「いや、えみちゃん可愛いよね」


「可愛いよね、じゃねーよアホっ」


至極真面目そうに言う巧パパにつっこむ巧。


堪えられず笑うと、巧パパが一瞬びっくりしたような表情になった。


「・・・えみちゃんの笑った顔は静にそっくりだな」


「え」


「院長先生、回診ですよーっ」


看護師さんの呼ぶ声がする。


「じゃあ巧もえみちゃんもまた来なさい」


そう言い残して、巧パパは慌ただしく去って行った。
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