KISS
「静、って・・・」
「母さんのこと」
手短に答えて巧は腕を離す。
「帰るぞ」
当然のように差し出された巧の手をとっていいものか?
あたしは迷っていた。
「えみ?」
巧。
「・・・あたしね」
怖かったんだ。
自分から手を離しておいて、怖かった。
巧に電話がつながったとき、次巧の手を掴んだら二度と離したくない。
そう思ったの。
「心配しなくても」
巧があたしの手を掴んだ。
熱い体温が、あたしの手をを包む。
「嫌って泣いても離してやんねー」
そのまま、巧はずんずん前を歩く。
・・・巧、それって。
巧もあたしの手をつないでいたいって思ってるってことだよね?
つながれた手をそっと握ると、握り返してくれた。
・・・あたしもつないでいたいよ。
ずっと。