KISS
濡れた唇が落ちてきた。


「・・・んんっ」


巧がそっと唇を離すと、舌でペロっと唇を舐めた。


「っ!」


あたしは顔から火が出そうな気持ち。


「笑」


いつになく、真剣な声。


咄嗟に分かってしまった。


あたしたちは変わってしまう。


今までの近くて遠い距離はすぐに埋められてしまう。


「巧、あたし」


「笑」


遮られて、あたしはどうしていいか分からない。


「俺に笑の全部をちょーだい」


突然世界がざわめいた。


あたしの世界が廻り始める。


それは前触れのない歯車。
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