KISS

桜の手をそっと持ち上げ、龍が確かめるように見る。


「怪我はしてない。・・・もう触るな」


あたしに向けるつっけんどんな声とは違って、優しい声。


だけど、桜は固まったように動かない。


「桜・・・?」


龍が桜の顔を覗き込むと、桜は泣いていた。


「龍、冬休みだけって言ってたじゃない」


嗚咽を隠そうとしながら、桜は龍にいう。


「高2からずっと行くつもりなの!?」


「・・・」


龍はその問いに答えなかった。


・・・それは肯定を意味していたのだろう。


「どうした?」


巧が人垣をかきわけながら、近寄る。


「桜?」


「・・・っ」


桜はすくっと立ち上がって、小さく呟いた。


「お手洗い、行ってくるね。・・・・・・少し、ひとりにさせて」
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