KISS

そのまま桜はパーティーには戻って来なくて、帰る間際になってから姿を現した。


「ごめんね、人に酔って疲れたのかな」


気丈に振る舞うけど、無理してるのは分かっていた。


「桜」


気遣いげに呼ぶ龍にもなんらかわりなく接している。


「ごめんなさい、心配かけちゃって」


「隠してたつもりはなかった」


龍は無理にでも話さなきゃいけないと考えたんだろう。


突然話を振った龍を見て、桜の表情はますます強張った。


「桜、あのさ」


「言わないで」


桜は聞きたくないとでも言うように、首を横にふるふると振った。
< 152 / 170 >

この作品をシェア

pagetop