KISS

「あたし、大丈夫だからね」


桜の強がりに、泣きそうになる。


あたしは、何もしてあげられないの?


このまま、このまま龍は行ってしまうの?


「えみ」


帰りのSHRが終わり、あたしがぼーっとしていると、龍が声をかけてきた。


「…なに」


最高に不機嫌そうな声しか出ない。


多分、表情も相当な感じだろうな。


「約束、守れなくてごめん」


…その一言は、あまりにも痛すぎて。


そう。


桜と龍が付き合っているということをあたしがしったとき、あたしは龍と約束をしたんだ。


最初で最後の。


…龍にしか守れないって、ひそかに思っていた、ある約束。
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