KISS

「・・・た、巧?あたし大丈夫だから、席戻ってて」


お手洗いのところで、あたしの服を染み抜きしている。


巧は黙ったまま。


・・・怒ってるのかな。


あたし、何かしたっけ?


「えみ」


急に名前を呼ばれてあたしは驚く。


「っな、なに!」


「えみって龍のこと好きなの?」


・・・・・・・・・・・・・はい?


「楽しそうに話すよね、龍とは」


伏せている瞳からは何の感情も読めない。


巧の様子がおかしい。


「全部ちょーだいって言ったじゃん。・・・くれねえの?」


どうしていいかが分からない。


巧は、あたしにどうしてほしいの?


何も言ってくれないから分からない。


巧は思わせぶりなことばかりする、昔から。


そして、あたしはいつも傷つく。


巧はそんなつもりはないのかもしれないけど。


「・・・巧は、あたしのこと妹みたいに思ってるから、寂しいって思うんだよ」
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