KISS

ドンッ


思い切り突き飛ばした。


巧を拒絶するのは、あたしの人生で二度目。


「寂しいじゃないね」


声が、震えた。


どうしてかは分からないけれど、ひどく苦しい。


あたしはこんな最低な奴が好きなんだ、ずっと前から。


「からかってるだけでしょ・・・」


「えみ?」


巧の戸惑うような声が、返ってあたしの耳に障った。


「あたしは巧のモノじゃないんだから!」


巧が伸ばしかけた手さえも、叩いて拒絶した。


あの、いつもあたしを引っ張る、熱い手を。


「もうあたしに干渉しないで・・・あたしに触れないで!」


苦しい。


どうしてかは分からない。


「!!?えみちいっ!?」


「えみ!!」


お手洗いから逃げるように席に戻ったあたしは、またも逃げるようにバッグを掴み、喫茶店を出た。
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