KISS

『・・・っ』


よろける桜を無意識に受け止める。


『な・・・っ』


女王もまさか桜が出てくるとは思わなかったんだろう。


『忘れ物見つかったか?』


呑気に現れた龍が、その場の険悪な雰囲気に気づく。


『は・・・お前ら何してんの』


黙ったまま、クラスの女子たちはばたばたと教室を出ていった。


『馬鹿、桜!』


桜の頬は真っ赤に腫れていた。


『・・・えみちい、大丈夫?』


『大丈夫も何も・・・』


あたしは何もされてない。


桜がそっとあたしの頬に触れた。


『泣かないで・・・』


・・・あたし、泣いてる?


『冷やせ』


龍が濡らしたタオルを桜に手渡す。


『帰り道、桜が忘れ物したって言うから戻ってきた』


龍があたしの頭にそっと触れる。


『何もされてないか?』


・・・あたしが、叩かれなきゃいけなかったのに。


どうしてあたしを庇ったりするの?
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