KISS

『桜・・・ごめん・・・っ』


嗚咽が邪魔で上手く言えない。


早く泣き止まなきゃ。


そう思うのに、涙が止まらない。


『なんで謝るの、えみちい悪くないじゃん』


桜は気づいていた。


あたしが、ずっと嫌がらせを受けていることに。


『ごめんね、ちゃんと守れなくて』


桜が謝る理由はないのに。


『・・・俺から巧には話しとく』


そう言って龍は眉を潜めた。


『お前は何も悪くないのにな』




その翌日のこと。


朝、巧を起こしに行くと、珍しくもう起きていた。


『えみ』


巧はあくまで無表情なまま、あたしに告げた。


『俺、木之下と付き合うことにしたから』


・・・それは、昨日桜を叩いた子の名前だった。
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