KISS
ギシッ、


ベッドの端に腰掛けると、少し大きな音がした。


だけど巧はそれくらいでは起きない。


そっと髪を撫で、耳元で囁く。


「・・・巧?」


さっきの音より小さな声、それなのに巧はうっすらと目を開ける。


「・・・・・・え、み・・・?」


「起きたら家来て、朝ごはん食べよ」


じゃあね。


そう言って立ち上がる。




・・・つもりだった。


急に腕を引っ張られ、首元に巧の腕。


「な」


「・・・ん」


巧の寝息が首に当たる。


掠れた声が耳元で聞こえ、漆黒の髪がさらりとあたしの頬に触れた。


・・・ヤバい。


心臓もたない!


「巧!」


思わず叫んでしまった。
< 3 / 170 >

この作品をシェア

pagetop