KISS
「急に帰るからびっくりしたよ?」
月曜日、桜が怒ったようにあたしに言った。
「しかも携帯の電源切ってるし」
「あはは、ごめん」
笑って謝ると、桜は心配そうにあたしの顔を覗き込んだ。
「・・・大丈夫?」
「・・・うん」
その言葉が『どうかしたの?』という意味だって言うことに気づいていないふりをした。
「なんかあったらひとりで抱え込まないでね」
桜に気づかれないように、あたしはこっそり苦笑した。
巧にしろ、桜にしろ、あたしの周りにいる人間はあたしを甘やかす癖があるらしい。
龍は違うな、うん。
そのとき、女の子達の歓声が聞こえた。
・・・どうやら巧が来たらしい。