KISS
「はな、して・・・」
「やだ」
離してくれなきゃ、あたしはずっと巧の手を離せない。
「離したくない」
きつく、きつく抱きしめられて、どうしていいかが分からない。
「お願い、離して」
それしかいえなくて、何度も口にする。
巧の手が、あたしの頬を撫で、すぐ近くにある視線があたしを捕らえた。
「もう、黙れよ」
そう言って、巧はあたしの唇を奪った。
「・・・ん、っ」
「えみ」
あたしの名を呼ぶその声が心地いい。
もう一度唇を重ねる前に呟かれたのは。
「・・・えみが欲しい」
これ以上ないほどの、甘い言葉。