KISS

「はな、して・・・」


「やだ」


離してくれなきゃ、あたしはずっと巧の手を離せない。


「離したくない」


きつく、きつく抱きしめられて、どうしていいかが分からない。


「お願い、離して」


それしかいえなくて、何度も口にする。


巧の手が、あたしの頬を撫で、すぐ近くにある視線があたしを捕らえた。






「もう、黙れよ」

そう言って、巧はあたしの唇を奪った。




「・・・ん、っ」


「えみ」


あたしの名を呼ぶその声が心地いい。


もう一度唇を重ねる前に呟かれたのは。




「・・・えみが欲しい」


これ以上ないほどの、甘い言葉。
< 42 / 170 >

この作品をシェア

pagetop