KISS
巧のお母さんは、あたしと巧が中学に上がる前に亡くなった。
交通事故で、あっけなく。
初めて会ったときの巧のお母さんの柔らかい笑顔を思い出す。
巧のお母さんはとにかく優しくて、どこかはかない印象だった。
・・・あたしには、はかなさとかそんなものはない気がする。
あたしは誰かに守ってもらうようなタイプじゃない。
『えみが欲しい』
巧の瞳に写るあたしは、ありのままのあたしなんだろうか。
巧が欲しいあたしはそのままのあたし自身なんだろうか。
それだけのことが、あたしを迷わせる。
「・・・守ってもらわなくてもいい」
だけど、淋しいとき1番傍にいて欲しいのは、
巧だけ−・・・