KISS
「・・・」
実は聞きたいことがあった。
だけど聞けなかった。
黙りっぱなしのあたしの腕を巧は引っ張ってバスに乗り込む。
「・・・っ」
熱い、手。
そのまま席に座る。
まだ腕は離してくれない。
バスの席で隣同士で座る高校生、傍から見たら付き合っているように見えるかもしれない。
でもあたしたちは付き合っていない。
ただの幼なじみだ。
・・・それが何よりもつらい。
でもあたしは巧の傍にいるだけでいい。
だからこの関係を崩すつもりはない。
巧は昔も今もこれからも、あたしのことを幼なじみとしてしか見ないだろう。
だから。
「・・・腕、離して?」
距離を保ちたい。
何も聞かない。