KISS

「・・・あたし、巧に会いたい」


今すぐに。


「いってらっしゃい」


桜の笑顔に後押しされて席を立つ。


どうしよう。


あたし、苦しいくらいに巧が好き。


想いはあふれるほどに大きくなってく。


残された桜は電話の音に気づき、携帯を取り出した。


ディスプレイに表示されていたのは、大好きな人の名前。


「もしもし・・・」


『桜?今どこ』


「龍」


『・・・どうかしたのか』


「・・・あたしね、えみちいが幸せで嬉しい」


だけどね、少し淋しいよ。


それでもえみちいが幸せならいいの


「雪宮くんがえみちいを傷つけたら絶対許さない・・・」


『巧に直接言ってやれ』


龍は笑いながらそう言い、少し不安が過ぎった。


・・・許さない、か。
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