KISS
「だ、だから・・・」


一瞬首を傾げたあと、巧は思い出したように声を上げた。


「ああ、・・・見てたんだ」


金曜日の放課後、学年でも可愛いと言われている女子に告白されているところ。


「まだ返事してない」


・・・う。


「どうしてほしい?」


顔を上げたら、ニヤリと笑う巧の姿が目に入った。


「・・・オッケーしたら、嫌?」


そのままあたしの顔を覗きこもうとするから、慌てて顔を逸らした。


「巧が決めればいいでしょ!」


ちょうどいつものバス停。


あたしは巧より先にバスを降りて、さっさっと歩く。


「笑ー」


「・・・」


「えみちゃーん」


顔向け出来ない。


付き合うに決まってる、あんなに可愛い子。


そう言われたら、きっとあたしは泣いてしまう。


そんな資格ないのに。




「断るよ」
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