KISS

1年、ぶり?


「・・・、ん」


巧があたしの視線から逃げるように、ふいと横を見た。


「巧、えみ。これからよろしくお願いします」


海くんが微笑みながら言った。


その微笑みに、何か違和感を覚えながらあたしは頷く。


「兄の方はうちのクラスだからなー」


担任が付け加える。


巧が小さく舌打ちして、校長室を出ていった。


「巧!」


あたしは巧を追って、走る。


「巧、何かあったの?」


巧にやっと追いついて、尋ねる。


巧は何も言わずにあたしを抱きしめた。


「・・・何でもない」


・・・何でもないなら、どうして抱きしめるの?


あたしの心に引っ掛かるのは、巧を見つめた陸ちゃんの視線−・・・
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