KISS

「た・・・」


呼ぶより先に、引き寄せられた。


抱きしめるというより、閉じ込めるという感じ。


「それでは失礼」


海くんは動じた様子もなく、去っていく。


「・・・」


残された巧とあたしに痛い沈黙だけが残される。


巧がふとあたしを離した。


「・・・ごめん」


どうして謝るの?


巧の想いが見えない。


巧のこと全部知りたいなんて無理だよ、だけどひとつでも多くを知っていたいのに。


それなのに。


巧が遠くにいるみたいで、あたしはどうしていいか分からない。


「えみ?」


俯いたあたしに優しい声がおちてくる。


巧にはわかんないかもね?


あたし、苦しいくらいに巧が好きだよ・・・
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