KISS

そっと離された手。


「は・・・」


「あいつの方が、いいのか?」


ゆっくり頭の中に巧の言葉が入ってくる。


・・・なんで、そんなこと言うの?


あたしのこと、試してる?


自分は陸ちゃんのこと、弁解さえもしないのに。


「・・・巧はどうなの?」


ダメだ。


「巧こそ、どうなの?」


今、あたし酷いこと言ってしまう。


「自分ばっかり傷ついてるみたいな顔してさ」


巧、お願い。


「あたしが何も不安にならないとか思ってんの!?」


本音を全て言ってしまうのを聞かないで。


「あたし、不安だよ。怖い。陸ちゃんと巧に何があったか」


聞かないで。



「巧のこと考えると、上手く笑えないくらい苦しい」





「・・・好きなのに」



あたしの精一杯の強がりはあっという間に決壊した。
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