KISS
慌てて巧の体から離れ、振り向くと。
「・・・陸ちゃん」
陸ちゃんが立っていた。
「え・・・なに、どういうこと・・・?」
戸惑ったように引き攣った笑みを浮かべ、陸ちゃんはあたしと巧の顔を代わる代わる見つめた。
「陸には言ってなかったけど、俺達付き合ってる」
陸ちゃんが思い切り顔を強張らせた。
「嘘・・・!」
陸ちゃんの細い肩が震えて、大きな瞳から涙が零れた。
あたしは思わずうろたえたけど、巧は冷たい瞳のまま陸ちゃんを見下ろしているだけで。
「すぐそうやって泣けば、男が引き止めてくれるって思ってんだろ?」
「巧、言いすぎ・・・」
「そうやって騙された、何度も何度も」
あたしの制止の声も聞かずに巧は吐き捨てるように言った。