KISS
「巧!言いすぎだよ・・・っ」
「いいから、えみは黙ってろ」
「でも・・・」
「・・・確かに傷つけたけど、今は巧だけだよ・・・・・・」
あたしと巧が押し問答を繰り返していたら、陸ちゃんがふいに顔を上げた。
「えみ、ごめんね。あたし巧が好き・・・」
「陸ちゃん」
あたしに近寄ろうとした陸ちゃんを巧は鋭く睨んだ。
「・・・近寄るな」
巧が、人を拒絶するところを初めて見た。
巧はかなり社交的な性格だから、どんな人にもそれなりに接する。
なのに・・・。
「・・・っ」
陸ちゃんは踵を返して、走り去っていった。
キャラメル色のふわふわの髪が揺れているのを、あたしはただ見つめていた。