夏の君を
夜、荒木くんからメールがきた。


<家の前にいるからちょっときてくれない?



あたしは戸惑いながらも返信せずに外にでた。



「あ、アカリちゃん。」



「疲れてるのにこんなとこまできてどうしたの?」



帰りのついでなのか、制服の荒木くん。


「俺、やっぱアカリちゃんのこと好きだ。恭弥なんかめて俺んとこ来いよ!」


これ、絶対恭弥に聞こえたよね。


家隣だもん。


「恭弥とは付き合っているわけじゃないよ?それに今こんなことしてる場合じゃないでしょ?もう予選近いんだからちゃんと体休めなきゃ」



向けられた視線は余りにもまっすぐで、その真剣さはいつも野球している時の荒木くんだった。



「確かめてもいい?」



「だめ!」


「付き合ってねぇんだろ?」


「うん。」


そんなことでバッテリーの中を壊したくない。



こんなわだかまりを作りたくない。



あたしは甲子園に行きたいだけなのに。



< 12 / 54 >

この作品をシェア

pagetop