『恋人代行 』 ① 媚薬の口づけ
小刻みに震える握り拳をベッドへ向けて
――――――――ボスッ。
あぁ~~~あぁ~~~ぁぁぁあ―――!!
もう、俺、どうしたらいいんだ?
無意識に手で髪を掻き乱していると、
「どうかしたんですか!?」
突然、目の前に彼女が現れた。
「あっ、いや…何でもない。ちょっと解けない問題があって…」
咄嗟に適当に言葉を見繕って話を逸らす。
彼女に気付かれないように…
姉貴からの依頼書は机の引き出しにしまった。
フゥ~~、マジでびっくりしたぁ~。
依頼書にムカついて、
彼女の気配に全然気が付かなかった。
ヤバい……ヤバい……。
危うくバレるところだったよ……。
………そう。
依頼書の5枚目には、
『今回の依頼は同伴者である金澤 葵にバレる事なく、無事、自宅に戻る事』
『成功した暁には、報酬は通常の10倍とする』
出来るか、出来ないか…分からないが、
“報酬10倍”に目が眩み、
俺は姉貴の依頼を実行する事になった。