『恋人代行 』 ① 媚薬の口づけ
翌日――――。
「葵、用意出来たか?」
「はい、これで最後です」
楓さんから受け取ったファイルを念のため鞄に入れて。
一応、取材の依頼リストは手帳に記した。
潤くんに取材してる事がバレないように。
潤くんが荷物を車に積んでくれて、
楓さんが見守る中、車に乗り込んだ。
「じゃあ、2人とも気を付けて」
「……はい」
「あぁ」
潤くんの運転で温泉地へと車は走り出した。
出発しちゃったよ……。
本当に私、大丈夫かな?
ヘマしたりしないかな?
潤くんの機嫌を取らないと……。
「潤くん、何か飲む?楓さんが色々持たせてくれたんだけど」
「ん~じゃあ、珈琲ある?」
「珈琲?……うん、あった」
ブラック珈琲を手渡し、自分はお茶を。
緊張しすぎて蓋が開かない。
すると、
「ん、貸してみ?」
「へ?」
潤くんは私の手からペットボトルのお茶を取り、
カチカチッと簡単に開けてくれた。
「あ、ありがとう」
「フッ、どう致しまして」
にこやかな横顔が眩しすぎるくらいカッコイイよ。