『恋人代行 』 ① 媚薬の口づけ
旅館到着――――。
10万坪にも及ぶ広大な敷地内に建つ数寄屋造り。
情緒あふれる日本庭園とそれらを囲うように自然が豊かに。
趣のある自然の中に温泉宿・翡翠楼がある。
素晴らしい景色を眺めながら、
翡翠楼の玄関へと向かうと。
「当、翡翠楼へようこそおいで下さいました」
綺麗な藤色の和服姿の女将さんがご挨拶。
「予約しております、葛城です」
潤くんが会釈をしながら…
「はい、承っております。お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ」
女将さんの後を潤くん、私、仲居さんの順で。
翡翠楼の玄関へ入ってすぐ、また敷地内を。
へ?……何処へ行くの?
庭園内を少し歩くと、
着いた先は庭園の奥隅にある離れ宿。
……えっ!?
もしかして、ここに潤くんと泊まるの?
固まる私の後ろから
「お荷物、こちらに置かせて頂きます」
仲居さんが入口脇に荷物を置き、
女将さんが潤くんに部屋の説明を始めた。