『恋人代行 』 ① 媚薬の口づけ
「お食事は18時頃で宜しいでしょうか?」
「はい、お願いします」
何やら潤くんと女将さんでお夕食の時間を。
「では、お時間になりましたらお持ち致します」
「はい」
「何かございましたら、内線でお申し付け下さいませ。では、ごゆっくり…」
女将さんと仲居さんは本館の方へと。
“お持ち致します”って言ったよね?
って、ことは夕食もここで?
はぁ……何だか余計に緊張して来た。
呆然と立ち尽くしていると、
「葵、とりあえず座って?」
「えっ?あっ……うん」
去り際に淹れて行ってくれたお茶を戴きながら、
プチパニック状態の脳を落ち着かせて…。
無意識に深呼吸。
すると、
「少ししたら、庭園でも見に行く?」
「えっ?」
庭園?
あっ!!そうだった……写真!!
“恋人”の設定で写真を撮らないと。
取材嫌いな潤くんをどうやって口説くかだ。
私は湯呑の淵越しにじっと潤くんを見つめて。