『恋人代行 』  ① 媚薬の口づけ


「お食事は18時頃で宜しいでしょうか?」

「はい、お願いします」


何やら潤くんと女将さんでお夕食の時間を。


「では、お時間になりましたらお持ち致します」

「はい」


「何かございましたら、内線でお申し付け下さいませ。では、ごゆっくり…」



女将さんと仲居さんは本館の方へと。


“お持ち致します”って言ったよね?

って、ことは夕食もここで?

はぁ……何だか余計に緊張して来た。


呆然と立ち尽くしていると、



「葵、とりあえず座って?」

「えっ?あっ……うん」



去り際に淹れて行ってくれたお茶を戴きながら、

プチパニック状態の脳を落ち着かせて…。

無意識に深呼吸。


すると、



「少ししたら、庭園でも見に行く?」

「えっ?」



庭園?

あっ!!そうだった……写真!!


“恋人”の設定で写真を撮らないと。

取材嫌いな潤くんをどうやって口説くかだ。



私は湯呑の淵越しにじっと潤くんを見つめて。


< 135 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop