『恋人代行 』 ① 媚薬の口づけ
「葵もドレス、似合ってる。綺麗だよ」
「//////////」
お世辞だって分かってる。
分かってるんだけど、
私の頭、壊れたみたい。
“綺麗だよ”
“綺麗だよ”
“綺麗だよ”
何度も何度も聞こえて来るよ。
ちょっと低めの落ち着いた声が
頭の中に響いて……。
興奮してパニック状態の私の手を
そっとしたから救い上げて、
「じゃあ、美鈴さん。俺ら、もう……」
「うん、そうだね!!うんと楽しんでおいで?」
美鈴さんはそう言って
満面の笑みを向けてくれた。
私は履き慣れないピンヒールを履いて
潤くんのエスコートする手に手を添えて
用意されたタクシーに乗り込んだ。
高鳴る鼓動と
僅かに震える身体と
隣りの彼から
微かに香るシトラスの香りと
流れる景色に高揚感を感じながら
夢のひとときに焦がれて。