『恋人代行 』 ① 媚薬の口づけ
何だか微妙な空気だけど、
元々あまり話すほど家でも会ってないし
会話を弾ませる方が難しいか。
それぞれが飲み終わる頃、
「じゃあ、そろそろ時間だし、行こうか?」
「うん」
「………」
私はバッグを手にして立ち上がると、
より一層、険しい表情で立ち上がる潤くん。
「潤くん、具合でも悪い?」
「ん?いや……何ともないけど?」
私の問いかけに辛うじて笑顔を見せた。
もしかして、最初から来るのが嫌だったとか?
そんな想いが過った。
お姉ちゃんの後を追って、
ロビーを抜け、エレベーターへ。
エレベーターの中でも潤くんは黙ったまま。
本当に体調が悪いのかも。
無理に付き合って貰うのは申し訳ないよね?
ある程度、お料理を戴いたら
潤くんと先に帰らせて貰おう。
………うん、そうしよう。