『恋人代行 』 ① 媚薬の口づけ
「午後のオペが急にキャンセルになって、実習が無くなったんだ。だから、少し時間が空いちゃって」
「オペ?えっ、お医者さんなんですか?」
「あっ、聞いてないの?俺、医大生。今年で卒業予定だけど」
「えっ!?じゃあ、23歳?」
「そう。今年24。もしかして見えない?」
「いや…大人っぽいと言うか、落ち着いていると言うか…。もう少し上かと思ってました」
「まぁよく言われる。医者って若いとナメられるから、歳より上に見られた方がラク」
カフェオレが運ばれて来た。
葛城さんはブラックコーヒーを飲んでいる。
「卒業前の忙しい時に…ごめんなさい」
「いや、大丈夫だよ。卒論も去年から少しずつ進めてるし」
「それならいいんですが…」
私が申し訳なさそうにしていると…
「じゃあ、本題に入ろうか?」
「はい」
葛城さんは優しい表情で話し始めた。
「明日の飲み会の場所に、バッタリ居合わせるって事で良いんだよね?」
「はい。場所も時間もチェック済みです」
「彼の前でどんな感じに振る舞う?」
「どんな感じと言いますと?」
「例えば、イチャイチャ、ベタベタとか。甘~い感じとか?」
「イチャイチャ…ベタベタですか…」
そうだよね。
亘に新しい彼氏を見せびらかすなら、少しくらいラブラブしてないと効き目が無いよね?