『恋人代行 』  ① 媚薬の口づけ


「午後のオペが急にキャンセルになって、実習が無くなったんだ。だから、少し時間が空いちゃって」

「オペ?えっ、お医者さんなんですか?」

「あっ、聞いてないの?俺、医大生。今年で卒業予定だけど」

「えっ!?じゃあ、23歳?」

「そう。今年24。もしかして見えない?」

「いや…大人っぽいと言うか、落ち着いていると言うか…。もう少し上かと思ってました」

「まぁよく言われる。医者って若いとナメられるから、歳より上に見られた方がラク」



カフェオレが運ばれて来た。

葛城さんはブラックコーヒーを飲んでいる。



「卒業前の忙しい時に…ごめんなさい」

「いや、大丈夫だよ。卒論も去年から少しずつ進めてるし」

「それならいいんですが…」



私が申し訳なさそうにしていると…



「じゃあ、本題に入ろうか?」

「はい」



葛城さんは優しい表情で話し始めた。



「明日の飲み会の場所に、バッタリ居合わせるって事で良いんだよね?」

「はい。場所も時間もチェック済みです」

「彼の前でどんな感じに振る舞う?」

「どんな感じと言いますと?」

「例えば、イチャイチャ、ベタベタとか。甘~い感じとか?」

「イチャイチャ…ベタベタですか…」



そうだよね。

亘に新しい彼氏を見せびらかすなら、少しくらいラブラブしてないと効き目が無いよね?



< 19 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop