『恋人代行 』 ① 媚薬の口づけ
「じゃあ、今から家に着くまでは俺の本当の彼女って事で。OK?」
「はい、OKです」
私は指でOKポーズをした。
すると葛城さんは、急に肩を抱き寄せ…耳元で、
「葵?もう始まってるよ?自然にね?」
「………はいっ!!///////」
私は緊張でかなりぎこちない。
「ハイじゃ無くて“うん”だよ?」
「えっ?あっ、………うん」
私は照れながら答えると、
「うん。良く出来ました」
葛城さんは優しく頭を撫でてくれた。
すれ違う人の視線が私達に向けられている。
ううん、私達じゃない。
葛城さんに……。
葛城さんは周りの視線などお構い無しで、平然と歩いている。
きっと、こういう視線も毎日だと慣れちゃうんだろうなぁ。
10分ほど歩くと目的の居酒屋に到着した。
私は深呼吸して、店内へ。
サークル団体はすぐ分かった。
入って、奥のお座敷で盛り上がっている。
店内は広いワンフロア型で、中央に厨房があり、卓席は厨房を囲うように配置されている。
私と葛城さんは、入って右側の席に案内された。
店内は簡単な衝立はあるものの丸見え。
厨房から全座席が見渡せる造りになっている。
中央の厨房で、板前さんのパフォーマンスとも言える包丁さばきが名物らしい。