『恋人代行 』 ① 媚薬の口づけ
私は彼に会いたくて、
学部の違う校舎まで来たけど…
このドアを開ける勇気は無い。
だって……。
彼は私の事を既に“彼女”として見ていない。
彼にとって私は、性欲対象でしか無かったらしい。
初めての恋だから大切にしてたのに。
彼のこと凄くスゴク好き…だったのに。
私は踵を返して、英文学科のある校舎へと戻った。
「あれ?葵、どうしたん?彼とのランチは?」
親友の尾崎二葉(おざき ふたば)が声を掛けて来た。
「ふたばぁ~~、ぅわぁあ~~~」
「どうしたのよぅ…」
食堂のテラスで二葉にさっきの経緯を話すと―――。
「やっぱりね…。前から噂はあったよ」
「噂?どんな…?」
「う~ん、女ったらしっていうか、遊び人っていうか…」
「そう…だったんだぁ……」
二葉は彼の本性を知ってたんだね。
私は恋に浮かれて、周りが見えなくなってたんだ。