『恋人代行 』 ① 媚薬の口づけ
俺はそんな彼女を独り占めしたくて
気付けば肩を抱き寄せていた。
目的の店まで来ると、彼女はフゥと深呼吸している。
多分緊張しているのだろう。
店内に入ると、中央に板前がいる厨房があり、囲うように席が配置されている。
店員に席へと案内された。
彼女が言ってた“フットサルサークル”は店内奥のお座敷に15人ほどいて、既に盛り上がっていた。
俺らは飲み物を注文して…
他愛も無い話をしていた。
すると―――――。
サークル連中の1人が俺らをジッと見ている。
俺もそいつをジッと見返した。
恐らく、葵の言ってた“彼”だろう。
まぁ、サークル連中の中じゃ男前な方だ。
女が好みそうな“イケメン”ってヤツだな。
俺がジッと見続けているとそいつは、俺を鋭い眼つきで睨み始めた。
まるで……“俺の女に手を出すな”とでも言いたそうな眼つきで。
俺は挑発するかのように…葵の隣りに移動した。
すると、かなり動揺している。
料理を摘まんだ手が止まっている。
さらに挑発するかの如く、葵の髪を触り始めた。
葵は照れてる様子だが、アイツは物凄い形相で睨んでいる。
当初の予定は“新しい彼氏を見せつける”ってだけだったが、
俺はいつしか………
あの男に“葵をフルんじゃ無かった”と思わせたくなっていた。