『恋人代行 』 ① 媚薬の口づけ
「これで、分かっただろ。お前は元カレ、俺が今の彼氏なんだよ!」
葛城さんは亘に宣言した。
「………」
亘は黙ったまま、握り拳を作って…
「葵、行こう。姉貴と葵の姉ちゃんが待ってる」
「………うん」
お姉ちゃんが待ってる?
そんな約束したっけ?
あっ……口実か。なるほどね。
私は周りの人達がザワザワ騒いでる中、
葛城さんに手を握られ、大学をあとにした。
駐車場に停めてある車に乗り込み
「先程は…ありがとうございました」
「今日が初めて?」
「えっ!?」
「さっきみたいなの…」
「………はい。先週の居酒屋以来、見たのは…」
「元々、あーいう奴?」
「あーいうって、どういう?」
車を運転する葛城さんは少し機嫌が悪いみたい。
やっぱり……さっきのはマズかったよね?
あんなトラブルに予定外に付き合せちゃったんだから。
お礼を言ったくらいじゃダメだよね。