『恋人代行 』 ① 媚薬の口づけ
ドンッ。
「キャッ!!」
「あっ…すみません」
「いえ……」
絶妙なタイミングの悪さで彼女にぶつかった。
彼女を支えようと、咄嗟に手が出た俺は……
―――――――――奴と目が合った。
彼女が“大丈夫です”と言って俺の手を引くから、
とりあえずはその場から抜け出せたが…
大丈夫だったか!?
バレたんじゃねぇか!?
アイツと目が合ったぞ!?
けど、何も言って来なかったって事は
バレなかったって事か?
眼鏡掛けてたし、
キャップ被ってたし、
目が合ったのは一瞬だったし。
大丈夫………だったのか!?
俺は奴の目が脳裏に焼き付いて…
その後のデートは殆ど記憶に無い。
依頼者の知人に出くわす事が無いとは言わないが。
奴の目は、その中でも危険な輩の類の目をしていた。
大丈夫だろうか……葵さんは。