『恋人代行 』 ① 媚薬の口づけ
しかし、奴は俺の行動を完全スルーして
彼女に俺が誰かと問い詰める。
彼女は少しキレ気味で…
俺を“彼氏”だと、
大勢の見物人の前で言い放った。
すると、奴の顔色が見る見るうちに変わって。
握り拳はふるふる震え、阿修羅のような形相。
恐らく、キャンパス内で“イケメン王子”とでも言われてるんだろう。
それが足枷になり、奴を我慢させているようだ。
こんなにも大勢の前で、ここまで騒ぎになってんだから
今さら、いい奴ぶら無くてもいいのに…。
きっと根っからのナルシストなんだな。
それに……。
奴の目の奥が笑ってない。
俺を見透かしているようで…。
もしかして、試されてる?
フッ。
言いたけりゃ、言えばいいのに…。
俺が“彼女以外の女とデートしてた”って。
けど、生憎…証拠は無く。
俺が“勘違い”と言えばそれまで。