『恋人代行 』 ① 媚薬の口づけ
彼女は…
緩やかではあるが、斜面になっている足元を全く気にせず…ズンズン歩く。
地面は所々に飛び石があるものの…
湿り気のある苔土と砂利が敷き詰められて歩き難い。
プラスして傾斜で足場が悪く…
そのうち、転んだり挫いたりするんじゃないかと気が気じゃない。
俺はヒヤヒヤでつつじより彼女を見てる。
俺って根っからのお人好し?
いや……違うな。
医者魂だろ。
卵と言えど、俺が付いてて怪我でもさせたら…
姉貴に何て言われるか……。
帰りの車内で、
彼女に依頼を続行するかと訊ねると、
“まだ暫く”と返って来た。
……………だよな。
俺もアイツの目が気になるし。
「さっきも聞いたけど、より戻す気は無いんだよね?」
「はい、ありません」
「彼が心を改めても?」
「………無いです」
……………そうなんだ。