『恋人代行 』 ① 媚薬の口づけ
「よかったぁ。姉貴から“黒いワンピースの可愛い子”だけしか聞いてなかったから」
「えっ?」
彼はホッとした様子で席に着き、コーヒーを注文した。
可愛い子? 私が??
あっ……お世辞か……。
そうだよね…。
「初めまして。俺、葛城潤って言います。姉貴から親友の妹さんの彼氏を…って聞いて来たんだけど…」
彼は爽やかに挨拶して、話し始めた。
超絶イケメンって、声までカッコイイの?
少し低くて、落ち着いていて、優しい感じの声。
私は彼の声にうっとりしていた。
「あの、葵さん?聞いてる?」
彼が覗き込んで来た。
「あっ、はい。すみません。えっと、何から話したらいいですか?」
「彼の事は聞いてる。その男に復讐したいの?」
「復讐だなんて、そんな大層なものじゃ無くていいんです。ただ、キッパリ別れたいと言うか。彼に“もうコソコソしなくていい”って思わせたいんです」
「別れるんじゃなかったって、後悔させなくていいの?」
「そこまでは…。後々しつこくされても困るし。」
「了解。で、どうやってするか決まってる?」
「えっと…それは……まだと言うか…」