微笑みと共に、世界は眠る
「ただでさえ一都市を殲滅(せんめつ)してしまう兵器に、結晶を埋め込んだのよ。そしてその兵器を〝CLR‐0〟と呼んだ」
青年は目を見開ける。
「それを使って……島一つを……」
思わず彼は口に出す。ええ、と彼女は言った。
「国内の全ての映像放送は勿論、険悪な関係である他国にも、その映像を見せ付けた。いとも簡単に、見るも無残に、殲滅している映像をね。そして言った。〝この結晶が、我々を勝利に導いてくれるものである〟と」
「………」
青年は唇を噛み締める。
彼女は一体その映像を見た時、どう思ったのだろうか。
世界の役になりたいと渡した物が、世界を歪ませる物として使われるなんて、思いもしなかっただろう。
「私は許せなかった。自然を守るどころか、殲滅してしまったから。そしてこれ以上の被害を防ぐために、私は結晶を〝私〟の中へ戻したの」
そう言うと、手の上にある緋色に色づいた結晶はほのかな光の粒となり、次第に消えていく。
「けれどそれが……事態を更に悪化させてしまった」
出していた手を強く握り締め、少女は額に当てる。