微笑みと共に、世界は眠る


「CLR‐0を損なうために、他国は恐れを押し切ってその国に攻撃を仕掛けた。その前に、政府はCLR‐0が見つからないように、国内に作った無数の地下保管所の一つに隠していたの」

幻惑させるために造られた地下保管所は後に国民の避難所となったが、そのせいで更に多くの犠牲者が出ることとなってしまったのである。

「政府は敵国を消すためにCLR‐0を稼動させたけれど、結晶がなくなっていることに気付き、動揺した。その隙に保管場所が見つかってしまい、その兵器は破壊されたの。そして政府も、抗うことはなかったわ」

「………なのに戦争は、終わらなかった」

彼の言葉に、彼女は静かに頷く。

「私のせいなの。私が、結晶を消してしまったせいで、戦争が終わりを迎えることはなかった……。他国は結晶がないことに気付き、〝違う国が奪った〟と勘違いし、焦ったの」

青の掛かった翡翠色の瞳が、紫紺の空を見上げる。どこか遠くを眺めるかのように、目を細めた。


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