微笑みと共に、世界は眠る
「そこからよ。世界戦争が勃発したのは。人々は結晶の力を恐れ、お互いを疑い合ったの。相手を潰し、その国が結晶を持っていないとわかれば、また違う相手を疑い、潰そうとする。それの繰り返しよ」
一呼吸置き、自嘲気味に少女は笑う。
「自分の世界を、自分が壊したのよ。本物の世界にいる彼ら研究者たちは、私を〝失敗作〟と呼ぶでしょうね。自分の世界を壊し、世界から解放されたいと願っているのだから」
彼女は言う。呆然と言う。
「最低ね、私」
「――っ……」
青年は少女の頭を自分の胸に引き寄せる。腰に手を回し、抱き締めた。
「君は、何も悪くない」
掠れた声が、耳朶に響く。心が、締め付けられる。
「どうして……」
ああ、どうしてあなたは――。
「私を責めないの?」
どうして、私を憎まないの?