微笑みと共に、世界は眠る
「〝カンナ〟――それが、俺の名前だよ」
「カンナ……、花の名ね」
ああ、と彼は頷く。
「母さんは花が持つその名の含意を、とても大切にしていたから」
幼い俺の頭を撫で、彼女は教えてくれた。俺に与えた名に込められている、意味を。
今はもうその姿を鮮明に思い出すことはできないけれど、それでも彼女の愛を、確かに俺は感じた。
「あなたに相応しい名前ね」
カンナ、それは〝堅実な生き方〟という意味を持つ、紅い花。
彼の母親は望んだのだろう。愛しい我が子が、どうか自分の進むべき道を見失わない子になりますように、と。