微笑みと共に、世界は眠る
「そうだ、君の名前を考えよう」
真っ直ぐと少女の瞳を見つめる、その姿に、彼女は少し驚いたような顔をする。
「俺にとって、君の名前はとても意味のあるものだから。君を見つけた時、俺は君の名を呼ぶことができるから」
「――……」
「だから、考えよう?」
温かい微笑みと、心に沁(し)み込んでいく愛しさ。少女は唇を綻ばせる。
瞼を下ろし、その悦楽にひたった。
「あなたと同じ、花の名がいい」
ああ、と青年は言う。
「あなたのことを忘れたくないという、その思いを持った花の名を、私に」
あなたから与えられた名を、愛を、私はずっと、大切にしたい。
「じゃあ、君の名は―――」
そよ風が街中を通り抜け、純白の花を揺らす。甘い香りが、二人を包んだ。