微笑みと共に、世界は眠る
( ばいばい )
涙は綺麗に頬を伝って落ちる。
悲痛なほどに、〝彼女〟は容易く引き金を引いた。
少女は胸元に優しく触れ、そっと瞼を上げる。
「……私が、殺してしまったのよ」
ねえ、それでもあなたたちは、私のことを〝希望〟と呼ぶの?
彼女は無意識に唇を噛み締めた。
「世界各国を行き渡りながら、その度に……その国が持つ素晴らしき景色を見る度に、私の心は弾んでいたのに」
胸元を強く握り締める。
「なのに戦争が勃発したせいで……!」
壊されてゆく、その国を象徴する建築物。
奪われてゆく、美しき景観。
少女はただ一人それを目にし続け、どれほどその〝自尊〟の心に罅(ひび)が入ったことだろうか。