微笑みと共に、世界は眠る
「二人が住んでいたのは他の国々に比べて小さな島国。けれど技術は劣っていない国だったの。そして二人は、ごく普通の女子高生だった」
「女子高生?」
「高校生のことよ。……って言っても、今じゃ知らない方が当たり前かしら。十六から十八歳の子供達のことを、高校生というの」
へえ、と青年は呟く。
「十五歳以下は何と言うんだ?」
「十三歳から十五歳は中学生よ。彼らはまだ社会に立つことは出来ないの」
「……今とは随分違うんだな」
「そうね……。その時代は今と比べて断然平和だった。でもその時代に、平和は壊された」
とても親しい仲だった二人。高校を卒業したら、旅行にいこうと約束もしていた。
けれどそれが叶うことは、なかった。
「他国と険悪な状態ということを、国民は知っていた。けれど誰も、自分の国が戦争をするなんて、思っていなかったのよ」
けれどある日、悲劇は襲った。
「……いつもと同じ、何も変わらないとある日常。けれどその日、その島国は突然近隣の国からの攻撃を受けた」
その次の日からは他国からも攻撃を受け始めた。
「――どの国も、その小さな島国を助けようとはしなかったの。助けようとするどころか、その国が攻撃を受けたことに、喜んだのよ」
「どうして?」
「……さあ、知らない」
どうしてかしらね、と呟いた少女は、沈む夕陽を眺めた。
本当はその理由を知っているのでは? となぜか青年は思う。そんな根拠なんてどこにもないというのに、なぜかそう思ったのだ。