微笑みと共に、世界は眠る
「そんなこと、信じるだけ無駄よ。現実的でないもの」
彼は明らかに怪訝な顔をする。
「あなたの真似よ」
向き直り、少女は再び階段を下り始める。
「現実的じゃない、だって?」
後を追いかけるように、青年も足を進める。
「ええ、そうよ」
「何が現実的じゃないというのさ」
「……時間がたくさん掛かってでも、元の姿に戻るということ」
そして、
「戦争が終わるということ」
一呼吸置き、彼女は言う。冷たく言う。
「そんな望み、捨ててしまった方がいいわよ」
「――っ!」
苛立ちが芽生える。
「いつか必ず、この争いは終わる! 無限に兵士がいるわけじゃないんだ!」
彼は思わず声を上げてしまった。